大腸菌
大腸菌(Escherichia coli)は、腸内に常在する細菌で、水環境中の存在は汚染の指標として扱われます。
大腸菌とは
大腸菌は、健康な人や動物の腸内に自然に存在するグラム陰性の桿菌です。多くの大腸菌株は無害であり、消化を助ける役割を果たしますが、一部の株は病原性を持ち、食中毒や尿路感染症などを引き起こすことがあります。特に病原性大腸菌(例:O157)は、重篤な食中毒の原因となることで知られています。
水環境中の大腸菌
水中での大腸菌の存在は、糞便汚染の指標として広く利用されています。大腸菌は温血動物の腸内に常在するため、水中に検出される場合、その水が糞便で汚染されている可能性が高いです。このため、飲料水や遊泳用水の安全性評価において、大腸菌の検出が重要視されます。大腸菌の存在は、他の病原性微生物(ウイルス、寄生虫、その他の細菌)が存在する可能性を示唆するため、迅速かつ正確な検出が求められます。
大腸菌の検出方法
水中の大腸菌を検出するためには、いくつかの方法があります。代表的な方法には、膜フィルター法、MPN(Most Probable Number)法、酵素基質法などがあります。
- 膜フィルター法:水試料をフィルターで濾過し、フィルター上に残った細菌を培養してコロニーを形成させます。
- MPN法:希釈シリーズを用いて水中の細菌数を推定する方法です。
- 酵素基質法:大腸菌が特定の酵素を持つことを利用して検出します。
これらの方法は、水質検査の精度と迅速性を向上させるために使用されます。
水処理における大腸菌の除去
水処理プロセスでは、大腸菌を効果的に除去することが重要です。以下は、主な水処理方法と大腸菌除去の仕組みについてです。
- 物理的処理
- 砂ろ過や膜ろ過は、大腸菌を含む微生物を物理的に捕捉し、除去する効果的な方法です。
- 特に、ナノフィルトレーション(NF)や逆浸透(RO)は非常に高い除去効率を示します。
- これらの技術は、細菌やウイルスを含む微細な粒子を効果的に取り除くため、水処理プラントで広く使用されています。
- 化学的処理
- 塩素消毒は最も一般的な方法で、塩素が大腸菌の細胞膜を破壊し、殺菌します。
- 塩素は有効で安価ですが、トリハロメタンなどの副生成物が問題となることがあります。
- オゾンや過酸化水素も強力な酸化剤として利用され、これらは塩素に比べて副生成物が少ない利点があります。
- 紫外線処理
- UV-C波長(200-280nm)は特に効果的で、短時間で大腸菌を不活性化します。
- UV処理は化学薬品を使用せず、二次生成物がほとんど発生しないため、環境に優しい技術として評価されています。
- 生物学的処理
- 活性汚泥プロセスでは、微生物群が有機汚染物質を分解し、その過程で病原菌が捕食されたり、増殖が抑制されることによって除去されます。
- 生物膜法は、固体表面に付着した微生物群がバイオフィルムを形成し、汚染物質を効果的に分解します。
大腸菌に関連する規制と基準
飲料水の安全性を確保するため、多くの国や地域では大腸菌の濃度に関する厳しい規制が設けられています。
- 世界保健機関(WHO)の飲料水ガイドラインでは、100mlあたりの水中に大腸菌が検出されないことが求められています。
- 日本の水道法でも、同様に大腸菌の検出限界を定めており、定期的な水質検査が義務付けられています。
これらの基準は、飲料水の安全性を確保し、公衆衛生を保護するために重要です。